デザウマのデザインでもウマいものでもなくて大阪弁の話です。

大阪弁の東京侵食が毎年確実に進んでいます。今日は私のような東京人でも大阪人でもない北海道人だから分かる言葉の勢力関係の話です。私は小学生で大阪のダウンタウンの布施に転校してきたので、それはそれは言葉に苦労しました。今では大阪弁はネイティブスピーカーですが、北海道に帰ると大阪弁は通じにくいし、怖がられるので使いません。

本題に入ります。バブルが弾けて30年、リーマンショックから13年、どん底景気の大阪の企業がこぞって本社を東京に移して多くの大阪人が東京に移り住んだ結果、東京の大阪文化が進んで言葉の侵食が始まりました。

私が頻繁に仕事で東京に行っていた1980年代は大阪弁はまだまだ肩身の狭い言葉で、明石家さんまが東京進出した1985年頃の大阪弁は嫌われ気味でした。当時銀座にあったイトーキの開発会議に出ると「だってさァー」とか「こんなのやってらンないよー」などと会議で言っていた人達が一緒にランチをする時には「ほんでなぁ」とか「そんなんめんどくさいやんかぁ」と言うのを見てこの人達はみんな二重人格者と思いました。イトーキは大阪発祥の会社で当時の幹部は殆ど大阪出身でしたが仕事で大阪弁は使いにくい言葉でした。

東京で大阪弁の認識が変わったのは浜ちゃん松本人志のダウンタウンが東京で活躍し出した1990年頃からでしょうか。今では関ジャニの村上信五や菅田将暉などが大阪弁のエバンジリストになり、東京でも大阪弁を普通に耳にするようになりました。

例えば、昔っからある大阪弁の「めっちゃ」は2000年頃の倖田來未の影響もあって、東京で普通に使われ出した大阪弁でした。2011年の調査では、東京を含む全国の9割の大学生がめっちゃ」を使用すると答えています。もはや若い人にとって「めっちゃ」は大阪弁ではなくて昔から使われている東京弁です。

東京のあるデザイン団体の女性幹部が「しんどい」を連発しているので、私がその人に「しんどい」はもともとは大阪弁ですよ。と言ったら「違います。しんどいは標準語です。」ときっぱり言われました。そもそも東京には東京弁という言葉は存在せず、東京の言葉が標準語なのだとする不遜な態度の人が多いです。近年の東京弁は流行りによって変化が激しく。この10年で苦しい、きつい、疲れるの表現がワンワードで幅広く表現できる大阪弁の「しんどい」が使い勝手が良いと普通に使われる様になりました。

普段使いの大阪弁が東京で人気の菅田将暉。

同じ言葉を使っていても東京と大阪では意味が違うので混乱する言葉もあります。それは「また」の使い方です。大阪弁の場合、初対面の相手であっても別れるときに「また飲みに行こか」と言ってしまいます。大阪弁では「また」には「今度」の意味が含まれてるから「また飲みに行こか」となるのですが、東京の人は「今日初めて会ったの人なのに何故またなの?」となります。

アクの強い大阪弁が人気のファーストサマーウイカ。

そして今、東京の放送界で流行りつつあるのが”えげつない”です。過去の”やばい”が流行ったのと同じように、良くない事や不都合な状況を指していたのに”えげつない”は「最高」とか「すごくいい」という使い方に変わりつつあります。

今日は毎年確実に進む大阪弁の東京侵食の一回目でした。

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